No.138 攻めのIT投資

 

経済産業省が「攻めのIT投資」を推進しようとしています。「攻めのIT投資」とは、『新事業への進出時における新たな価値を創出するIT投資』や『既存ビジネスの強化により利益を拡大するIT投資』を指します。逆に「守りのIT投資」とは、一般的に行われている『社内業務(間接業務)の効率化や利便性の向上のための投資』のことです。

 今後、「攻めのIT投資」に関する施策が数多く出てくると考えられますので、注目したいところです。

  

この政策の背景には、アベノミクスの一環である「日本再興戦略」があります。20146月に「日本再興戦略」が改訂され、『日本の「稼ぐ力」を取り戻す』ことが掲げられています。

 

以下、「日本再興戦略」からの抜粋です。

 ―――――――――――――――――(抜粋内容)―――――――――――――――――――

 企業が変わる (生産性の向上)

 

日本企業の生産性は欧米企業に比して低く、特にサービス業をはじめとする非製造業分野の低生産性は深刻で、これが日本経済全体の足を引っ張っている状況にある。また、グローバルな市場で戦っている産業・企業には、市場環境の変化への対応が遅れ、苦戦を強いられているケースも多い。第2次安倍内閣発足後のマクロ環境の改善により企業業績は回復しつつあるものの、競合するグローバル企業との比較では、未だ十分とは言い難い。サービス分野を含めて生産性の底上げを行い、我が国企業が厳しい国際競争に打ち勝って行くためには、大胆な事業再編を通じた選択と集中を断行し、将来性のある新規事業への進出や海外展開を促進することや情報化による経営革新を進めることで、グローバル・スタンダードの収益水準・生産性を達成していくことが求められている。企業の「稼ぐ力」の向上は、これからが正念場である。

 ―――――――――――――――――(ここまで)―――――――――――――――――――

  

生産性とは、単位時間当たりの付加価値(粗利高)で測ることができます。付加価値を総労働時間で割れば、算出できます。生産性を向上させるためには、分母の総労働時間を小さくするか、分子の付加価値を大きくすることになります。

 

前者を「守り」、後者を「攻め」と、国は捉えており、後者を実現するためにITを活用しようという内容です。

 具体的には、Webマーケティングによる売上の拡大、顧客データの分析による個別クーポンの発行で来店頻度の向上、スタッフが顧客情報を共有して接客サービスの向上、というようなものです。

 

こうした経営を実現するためには、ITを考える前に「稼ぐ経営」を考えなければなりません。どういう「稼ぎ」をするのかを考え、それを実現するために必要なITは何かを考える、という順序です。

 

「稼ぐ経営」とは、言い換えれば顧客価値を最大化することです。顧客に買っていただかないと、売上や利益は増えません。そのためには、顧客が望んでいることは何か(顧客価値)をしっかりと考えることがスタートです。

 

●価格

 顧客の求める価値が価格(安さ)にあるなら、仕入や生産コストを下げる必要があります。ここにITを活用する方法が考えられます。

 

●品質

顧客の求める価値が品質にあるなら、現場で品質をリアルタイムにチェックできる仕組み作りや品質をトレースする仕組みが必要になります。ここにITを活用する方法が考えられます。

 

●豊富さ

 顧客の求める価値が品揃えの豊富さにあるなら、売筋商品や死筋商品の管理を徹底したり、品切れを防止しながらも過剰在庫にならないような管理を徹底することが必要になります。この管理にITを活用する方法が考えられます。

 

●速さ

客の求める価値が納期の速さにあるなら、受注から出荷までの工程管理を徹底することや各工程での生産効率向上が必要になります。ここにITを活用する方法が考えられます。

 

このように、「稼ぐ仕組み」(これをビジネスモデルと言います)を、しっかりと考えることで、ITの有効な活用法が見えてきます。

 

では、「稼ぐ仕組み」はどのように考えたらいいのでしょうか。顧客が望んでいることを考える(観察し分析する)ことが基本ですが、それだけでは難しいので、成功している事例をたくさん見ながら、自社の「稼ぐ仕組み」を考えることが必要です。

 

同様に、ITの活用法も成功している事例をたくさん見ることで、ヒントを得ることができます。

 

弊社が属する上坂会計グループや商工支援団体などでは、成功事例の発表セミナーや視察ツアーなどを行っていますので、こうした機会を利用されるのもいいと思います。

 

コメント: 0 (ディスカッションは終了しました。)
    まだコメントはありません。