No.141 ロボット 人工知能

上坂会計グループ(UCF)の研修旅行がありました。九州のほうへ行ったのですが、行程に安川電機さん(http://www.yaskawa.co.jp/)の見学がありました。安川電機さんは、産業用ロボットの生産台数では世界第一の企業です。
ロボットの進化は、世の中にどのような変化をもたらすのでしょうか?


安川電機さんで見た産業用ロボットは、動きをあらかじめ教え込む(人間がリモコンで動かしながら動作を記録する)ことで、同じ動きを正確に素早く行うことができます。安川電機さんはモーターを中核技術としていることもあり、6軸や7軸のアームが動く様は人間の腕が動いているようで、その動きには感動しました。
産業用ロボットで違う製品を生産するためには、その都度新たな動きを人間が教え込まなければなりません。そういう点では、人間の動きを模倣するレベルのロボットとなりますが、単純労働はこうしたロボットが人間からどんどん仕事を奪っています。また、危険な場所での作業など、人間では困難なことを助けてくれる頼もしい助っ人でもあります。


状況に合わせて自律的に動くロボットを作るためには、人工知能の技術が必要になります。この分野では、オセロやチェス、将棋などのボードゲームにおけるコンピュータソフトが先行しています。オセロでは、人間がコンピュータに勝つことはできなくなっています。チェスでは、1996年に世界チャンピオンが当時の最強コンピュータに負けており、その後も人間が勝つことは困難になっています。将棋は、取った駒を再利用できるなどチェスに比べてルールが複雑なこともあり、コンピュータが人間に勝つのはかなり先になるだろうと言われていましたが、2000年代中頃から急激に強くなり、最近ではプロ棋士が次々と敗れています。


どうして将棋のコンピュータソフトが強くなったのでしょうか? そこには「機械学習」という技術があります。コンピュータがデータの中から知識やルールを自動的に獲得することを「機械学習」と言います。
将棋の場合だと、過去のプロ棋士の棋譜をもとに、膨大な指し手の中から最適なものを選択することが可能になってきたのです。それまでは、全ての指し手を考え、それぞれについて評価(採点)を行い、最も点数の高い指し手を選ぶという方法が取られていました。ある意味で力技による方法のためコンピュータの性能が大きく影響し、何手先まで読むかや評価方法によってコンピュータソフトの優劣が決まっていました。しかし、機械学習によって、無駄な指し手を省くことが可能になり、また評価においても、過去の棋譜をもとに盤面全体を大局的に捉えて最適と考えられるものを高く評価するなど、人間が将棋を学ぶのと同じような手法を取り入れることで強くなったと言われています。
棋譜から学ぶという点では人間の経験値をもとに学んでいることになります。そのため、これまでに無かったような奇抜な指し手を打たれると、コンピュータが迷い、結果負けることもあるようです。しかし、こうしたことも学習して取り込むことができるようになっており、コンピュータが自ら成長する仕組みを持っています。


一方、IBMのワトソン研究所が開発したWatsonというコンピュータが、2011年に米国の人気クイズ番組「ジョパディ」で人間のクイズ王に勝利したことは有名です。Watsonは大量の文献を読み込み、内容を理解することで、質問の答えを自動作成することができるのです。
更に、多数の画像の中から猫が写っている写真だけを抽出することが可能になったり、ドローンのような無人ヘリコプターが登場したりしています。また、リアルタイムで機械翻訳することも可能になってきており、この分野の進歩はまだまだ続くものと思われます。


産業用ロボットなどでは人間が教えた通りのことしかできませんが、機械学習を持つ人工知能ロボットでは自らの学習によって進化することができます。人間が決めたルール通り動くのではなく、自らルールを作り続けて進化できるのです。
単純な肉体労働を置き換えてきたロボットですが、人工知能ロボットの進化によって、知識労働を担うことも可能になってきています。例えば、事件の捜査などにおいて大量の文書ファイルの中から不正な文書を見つけ出すことや、データサイエンティストが行うデータ分析や予測、などの分野では研究が進んでいるようです。
士業や医師などの専門的な職業であっても「経験や知識をもとに様々なことを判断している仕事」のため、人工知能ロボットが担うことは簡単だと思います。経験や知識をもとにした知識労働が、将来ロボットに置き換わる可能性があります。


では、人間の仕事は無くなるのでしょうか?

思考力・想像力・問題解決力など機械にはできない多くのことがあります。ロボットが進化すれば、人間は『人間にしかできない分野』によりエネルギーを割くことになるでしょう」
「確かに仕事が奪われることもあるでしょうが、失われる雇用以上の雇用が新たに生まれるでしょう」
様々な意見がありますが、ロボット技術が社会に大きな変化をもたらすことは事実であり、その動向を注視する必要があります。

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