No147 マイナンバーの情報管理

年金機構による年金情報の漏えいが大きな問題となりました。また、これをきっかけにマイナンバーに対する不安の声も大きくなりました。マイナンバー導入のきっかけとなったのは、「消えた年金問題」です。ニュースを見たとき、「年金機構さん、それは無いだろう・・・」と思わず叫んでしまいました。

複雑化する行政事務の効率化と行政コストの削減を目的に、マイナンバー制度が始まろうとしています。制度によるメリットを考えると、後戻りすることはないと思います。そのためにも、デメリットである情報漏えいなどを防ぐ対策を確実に行うことが大事になります。

 

日本における番号制度は、基礎年金番号、健康保険被保険者番号、雇用保険被保険者番号、納税者番号、住民票コードなど各行政機関が目的ごとに個別に番号を付与しています。そして、それらの情報同士を結びつける方法がありません。そのため、引っ越しなどで住所が変わったにも関わらず、年金関係の情報は古い住所のままということがあり、消えた年金問題などが起きました。また、こうした事態を防ぐために、国民は2度3度と行政機関に足を運ぶ必要があります。更に、住所変更という一つの事象に関して、複数の行政機関が同じような処理を行うことになり、行政コストも高くなっています。

 

こうしたことを無くすために、共通番号(マイナンバー)を使って、バラバラに行われている行政サービスを一元化しようというのが、マイナンバー制度の目的です。2016年には、納税や社会保障分野からスタートします。たとえば児童手当を申請する際、現在は所得証明書や健康保険証のコピーをそろえて市町村の担当部署に申請します。マイナンバー制度導入後は、窓口で個人番号カードを提示するだけになります。

個別の番号と一緒に共通番号をそれぞれの情報に埋め込むことで、情報同士をつなげることが可能になります。児童手当の例だと、役所が所得など必要な情報を個人番号で簡単に照会できるため、申請が簡素化されるのです。

 

しかし、こうした制度への不安もあります。マイナンバーを使って、所得や家族構成などの個人情報が芋づる式に漏洩するのではないか、という不安です。マイナンバーを使って各種の情報を照会できるのは、関係する行政機関だけです。かつ、このネットワークはインターネットとは接続されていません。そのため、行政機関に勤める職員が不正を働かない限り、大量の情報漏洩が発生するリスクは低いと考えられます。

 

一方、他人のマイナンバーを使ってその人になりすまし、各種情報を引き出したり、年金などを不正に受け取ったりという事件が起きる可能性があります。こうした事件を防ぐために、マイナンバーを提示する際は、写真で本人を証明できるもの(運転免許証など)も提示することになっています。

 

マイナンバー制度により、企業にもマイナンバーの管理が求められます。源泉徴収票や支払調書、社会保険異動届などにマイナンバーを記載しなければなりません。記載の都度、マイナンバーを本人から確認する方法もあります。しかし、社員数が多い場合、その作業は大変です。また、給与計算ソフトなどを使って源泉徴収票を作成している場合、マイナンバーだけを手書きするというのも大変です。

そのため、社員および社員の扶養家族のマイナンバーを社内に保管することになります。この保管体制が不十分だと、マイナンバーが漏洩する可能性があります。そこで、マイナンバーを安全に管理するための指針「特定個人情報の取扱いに関するガイドライン」が公表されています。

 

では、どのようにしたらいいのでしょうか? 検討作業を以下のように進めると、判りやすいかと思います。

① マイナンバーを扱う業務を洗い出す

② 業務毎にマインバーを利用する方法(いつ。誰が、どのように)を書き出す

③ 利用方法に応じて、マイナンバーの収集方法や管理方法を決める

④ ②や③の方法に応じて、ガイドラインを参考に管理策を検討する

⑤ 管理策が大変でコストもかかるようであれば、②や③の代替手段を検討する

 

まずは、現状のやり方を②で書きます。次に現状のままでマイナンバーを扱うとして③を考えます。それを実行するための管理策を④で検討します。そうすると、大変だなー、とかコストがかかるなー、ということが見えてきます。ので、⑤で他の手段がないかを考えます。代替手段が見つかった場合は、②に戻り同じように作業を進めます。

マイナンバーに関する様々なサービスが生まれています。⑤の代替手段の検討は、こうしたサービスの利用も含めて検討されるといいと思います。

 

まだ時間はあります。が、何もしないとその時がやってきます。その時に慌てないためにも、今から検討を開始しましょう。そのためにも、セミナーなどを利用してその詳細をしっかりと学ぶようにしてください。


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