No.132 情報共有と組織風土

グループウェアなど情報を社内で共有するためのソフトを利用している企業が増えています。また、最近では、FacebookやLineなどのソーシャルメディアを社内の情報共有ツールとして利用している企業もあります。
一方で、こうしたツールを活かしきれていない企業も多くあります。これは、組織風土によるものだと考えています。


ITの進化がもたらしている社会変革を産業革命になぞらえて、「IT革命」と呼んでいますが、正確には「情報革命」だと思います。IT(情報技術)の進化によって情報を処理することが非常に簡単に早くできるようになったことで、社会が大きく変わったからです。
こうした「情報革命」は過去にも起きています。紙の発明によって、情報が伝達できるようになりました。活版印刷の発明は、情報を簡単にコピーすることを可能にしました。電信・電話の発明は、遠くにいる人とリアルタイムで情報を共有できるようにしました。更に、ラジオやテレビの発明は、多くの人に同じ情報を瞬時に伝えることを可能にしました。
ITの進化は、こうした過去の情報革命を凌駕するもので、『文字・音声・静止画・動画などあらゆる情報を双方向で、個人レベルで簡単にやりとりすることが可能』な社会を作りだしました。


こうした「情報革命」による社会変化は、権力構造の変化をもたらしました。権力者とは情報を持っている者、と言えます。様々な情報を集めそれをコントロールすることで、自分の権力を維持していることは、歴史を見れば明らかです。国王、教会、独裁者、など権力を手中にした人たちは、情報を上手くコントロールしていた人たち(情報強者)です。
ところが、「情報革命」によって、情報弱者に多くの様々な情報が伝わるようになり、民主化運動などを通じて権力者をその地位から落し込みました。最近では、アラブの春と言われる民主化運動にITが大きく関わっています。一方、こうした動きを警戒している中国では情報統制が厳しく行なわれています。


企業においても同じことが言えます。情報を多く持っているのは経営者です。経済環境が良好だった頃は、経営者が社内における情報を統制し会社を一つにまとめ上げ、経営者の指示のもと組織が目指す方向に導いていました。そのために、組織構造は軍隊的な縦割りの組織が向いており、上意下達型の社内コミュニケーションが適していました。また、ITが進歩していないときは、この方法が情報を効率よく伝えるには向いていました。
しかし、社会変化が早い昨今では、こうした組織では変化への対応が遅くなるため、社内の情報共有を進めフラットな組織構造にする傾向にあります。社内のコミュニケーションは双方向型となり、現場で判断や実行が行なわれることから対応スピードが速くなります。
情報共有を進め社会変化に俊敏に対応できる組織にするためには、組織風土を変える必要があります。そのためには、経営理念やビジョンを明確にして社員に徹底することで、社員が自律的に活動できるようにしなければなりません。また、共有する情報に関するルールを明確にすることも重要です。社外秘の情報を漏洩されては困ります。情報の定義付けや取扱方法、そして社外秘の意味などを社員に教育することも必要です。


どちらの組織形態がいいとか悪いとかではなく、組織が置かれている状況や成熟度などによって使い分けることになるのだと思います。また、社内の事業内容に応じてハイブリッド型ということもあると思います。
いずれにしろ、組織形態からくるコミュニケーションのスタイルに合ったツールを上手に使わないと、その効果が生まれないということです。


上意下達型の社内コミュニケーションが行なっている組織では、グループウェアなどの情報共有ツールを利用しても、その効果が十分に発揮できません。それは、従来の縦割り組織の風土にあっては、そもそも情報を共有する必要性を社員が感じていないからです。また、経営者が情報を開示することに積極的でないことが多いため、共有する情報が少ないのも事実です。こうした組織では、一対一のコミュニケーションが主ですので、電話やメールといったツールが向いていると考えています。
一方、双方向型の社内コミュニケーションが行なわれている組織では、活発な情報交換が行なわれていますので、SNS型の情報共有ツールが有効になります。情報登録があると、その旨を通知してくれる機能があることで、スピード感のあるコミュニケーションがいつでもどこでも行なえます。こうした組織では、ツールを使いきれないと社内で落ちこぼれてしまいます。


このように、組織風土からくる社内コミュニケーションに応じた情報ツールを利用しなければ効果のあるIT投資にはなりません。また、情報ツールを利用して社内コミュニケーションを改革したいと考える場合であっても、組織風土を併せて改革しなければやはり効果は生まれません。


自社の組織風土や社内コミュニケーションを今一度見つめ直し、ITをどのように活用するかを考えてみてはいかがでしょうか。

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