No.136 利益を出す計数管理

経営を行う上で、計数で経営の状態を把握し管理することが重要であることは、経営者の方であれば十分に理解されていると思います。しかし、こうした計数管理が十分に行われていない企業が多いのも事実です。一方、業績を伸ばしている企業は、計数管理をしっかりと行っています。
計数管理の必要性は判っていながら、できないのはなぜでしょうか?


① 明日は気温が35度以上の猛暑日になるもようです。
② 1時間に50mmを超える大雨が降るかもしれません。
これらは気象予報で聞かれる言葉ですが、これを聞いたときの感じ方が異なると思いませんか。①を聞くと、明日は暑くなるな、熱中症に気を付けよう、と直感的に状況を把握でき対策を考えることができます。一方、②を聞いても、すごい雨が降るらしい、ということを感じても、どのくらい凄い雨なのか、どういう対策が必要なのかをすぐに思い浮かべる人は少ないと思います。


計数管理を成功させるためには、管理で使われる数字を聞いたときに、今どういう状況なのか、それはいい状況なのか悪い状況なのか、だから今後どうしたらいいのか、が瞬時に思い浮かぶようでなければなりません。
計数管理と言うと、売上額や利益など財務の数字を使って行うことが多いと思います。経営者であればこうした数字で状況を判断できますが、一般の社員では状況を判断することは困難です。また、状況は理解できても、どうしたらいいのか判らないために、改善行動に至らないことになります。
計数管理を社内に定着させるためには、一般の社員であっても状況が瞬時に思い浮かぶような数字を使って改善行動ができるような計数管理を行う必要があります。


計数管理の目的は、自社の計画に対して実績がどうだったかをチェックし、原因を分析し問題点の改善を繰り返すことで、目標とする利益を出すことにあります。一般に、P-D-C-Aサイクルと呼ばれる管理には、計数管理が必須となります。


こうした計数管理ができない原因を、私は企業のレベルに応じて、次のように分類しています。
第1段階:経営の計画値が無い
第2段階:計画値はあるが、実績値を収集できない
第3段階:計画値も実績値もあるが、チェックする体制が無い
第4段階:チェックをしているが、原因分析などが行われていない


状況がいいのか悪いのかは、実績値を計画値や目標値と比較することで判断できます。そこで、まず計画を作成しなければなりません。そして、上記したように一般社員でも判る指標を適切に設定する必要があります。
全社の売上や粗利を指標とすると、チェック後に原因を分析することが曖昧になります。第四段階にある企業の多くは、この計画の作成に問題があります。最終目標である数値、これをKGIと言います。この結果を出すために必要な行動を促すための数値、これをKPIと言います、を計画として盛り込むことが必要です。
売上計画を顧客別や担当別に分割する、売上を客数と客単価に分解し客数の目標を設定する、売上に影響を与える要因(例えば、納期の厳守)に対する目標を設定する、などです。


計画が作成できても実績を収集し、チェックできるようにしなければなりません。実績値データの収集は、KGIだけでなくKPIについても実施します。KGIは月次決算で得られますが、KPIを得るためには社員の協力と仕組み作りが必要になります。第二段階にある企業の多くは、実績値を収集する仕組みが出来ていないことにあります。
一時的に人海戦術で実績データを収集しても、それを継続させなければ管理ができているとは言えません。裏を返せば、実績データを継続して収集できる指標を選ばなければならない、ということにもなります。


実績データを収集する仕組み作りに、ITを活用することができます。生産性の向上を目指して作業実績を収集する場合、作業日報を紙に書いて収集する方法だと、社員の負担が増え、生産性に影響を与えることになりかねません。計数管理を導入できない企業には、こうしたことで躊躇しているケースも見受けられます。
例えば、作業指示書にバーコードを印字し、それを各工程の開始時と終了時に読み取ることで、工程毎の生産時間を把握することが簡単にできます。生産の進捗管理にも使え、生産計画があれば、計画との差異をリアルタイムに表示することが可能になります。現場では、納期遅れを防止するための数値に使え、生産性(人時生産性など)を把握する数値にも使えるようになります。こうした仕組みを現場の仕事の中に埋め込むようにすることが計数管理を成功させるポイントです。


計画を適切に作成し、実績を収集する仕組みが出来上がれば、後は定期的にチェックする体制を作り、チェックだけでなく原因確認と改善策を検討することを繰り返すことで、会社が目指す結果(利益)を出すことができます。

コメント: 0 (ディスカッションは終了しました。)
    まだコメントはありません。