No.139 業務効率化を実現するノウハウ

ITを導入する目的の一つに、業務の効率化があります。ITが普及し始めたころは、これが主目的でした。

ところが、ITを導入したことで本当に効率化が進んだのでしょうか? 日本の生産性は、OECD加盟国34ヵ国中第21位、主要先進7ヵ国では1994年から19年連続で最下位という結果が出ています。特に、サービス業やホワイトカラーと呼ばれる営業や間接部門での生産性が低いと言われています。

ITが普及しているにも関わらず、なぜ業務の効率化が図られないのでしょうか?

 

お客様と話をしていると、こういう場面がよくあります。

「この業務は何ために行っているのですか?」

「よくわかりません。前任者からこうするようにと言われたので行っています」

 

目的も判らないまま言われた通りに業務を行っている、という事例です。更に、その業務の結果(例えば、作成した資料)が他の誰かに使われているのかとヒヤリングを続けると、誰も見ていないというケースさえあります。全くムダな仕事をしていることになります。

ここまで極端で無いにしろ、業務の目的がよく判っていないために、無駄なやり方で業務が行われていることがあります。

『駄』とは、馬に積んだ荷物のことで、荷をつけて運んだ結果「駄賃」がもらえることになります。しかし、荷をつけない空馬だといくら歩いても稼ぎは無いため、その歩きは「無駄」になります。そこで、お金を生まない仕事を「無駄」と言うのです。

 

一方、次のような場面もあります。

「うちの会社(業界)は特別だから、そんな方法はできない」

「そんなことしたらお客様が逃げてしまう」

 

世の中にある一般的な業務のやり方に変更しませんか、という提案をしたときに聞かれる言葉です。世の中の一般的な方法と比べ特別なやり方が、他社との差別化になっているようなものであれば、それを変えるどころか、ますます磨きをかける必要があります。

しかし、そうではなくて、これまでこうしてきたから、手作業のときはこの方法が楽だったから、というような理由で特別な方法を行っているのであれば、それは変更すべきだと思います。

物事の筋道が立たず道理に合わないことを「無理」と言います。世の中で一般的に行われている業務のやり方は、様々なノウハウが詰め込まれた「道理」と言えます。それに逆らって自社独自の方法でやることは、ある意味で「無理」をしていることになります。

 

「無駄」「無理」とくれば、最後は「斑(むら)」です。物事がそろわないこと、一定していないことを「斑」と言います。業務に当てはめると、同じ仕事なのに、行うタイミングや行う人によって、時間や品質がバラつくことを指します。

誰でも簡単に業務ができるように「単純化」していないことや、誰がやっても同じようにできるように「標準化」されていないことが「斑」を生み出す原因です。

 

業務を効率化するというのは、業務における「ムダ・ムリ・ムラ」を無くすことです。こうしたことをせずに、IT化しても大きな成果を得ることはできません。ムダな仕事をIT化しているケースもあります。ムリな仕事をIT化するために多大な投資をしているケースもあります。また、せっかくIT化したにも関わらず、使い方を現場任せにしているため、担当者毎にやり方が異なり「ムラ」が無くなっていないケースもあります。

 

このようにIT化したから業務が効率化されるというのは間違いであり、業務を効率化するために「ムダ・ムリ」を無くすことから始める必要があります。そして、「ムラ」を無くすためにITの活用を考えることになります。

つまり、単純化・標準化を進めるための道具としてITを利用するということです。

 

では、どうやって「ムダ・ムリ・ムラ」を無くしたらいいのでしょうか?

まずは、対象となる業務の棚卸を行うところから始めます。業務を構成している作業を洗出し、それを業務フローとして書き表します。業務フローを見ていくと、いたるところに「ムダ」があることが見えてきます。また、フローが入り乱れるようであれば、そこに「ムリ」が存在する可能性があります。

このようにして、業務フローをすっきりとさせることで、「ムダ・ムリ」を無くすことができます。

次に、作業毎にマニュアルを作成します。マニュアルを作成する目的は、誰でもが同じような方法で作業を出来るようにし、同じような品質の結果を生み出すことです。

「同じような記述を複数の台帳に行う」「同じような計算を何回もする」と言った作業があれば、これらはIT化に相応しい作業です。

 

業務の効率化について、今一度考えてみてはいかがでしょうか。


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