No146 人時生産性で収益改善

アメーバ経営では「時間当たり採算表」と言われている「人時生産性」は、一人あたり1時間の付加価値額のことです。つまり、社員一人が1時間の仕事で、どれだけ稼いだかを求めるものです。企業の収益性を高めるためには、「人時生産性」を高めていくことは不可欠です。
人時生産性 = 付加価値額 ÷ 総労働時間
付加価値額 = 売上高 - 変動費(仕入や外注など)


経営において社員の採用は最大の投資と言っても過言ではなく、その投資による回収状況を把握することは経営する上で最も重要なことです。それを測定する指標が「人時生産性」と言えます。


例えば、年商3億円で付加価値額が1億円の企業(A社)があったとします。従業員は15人で、年間労働時間は、2000時間(8時間×250日)とすると、年間の総労働時間は、30,000時間になります。
A社の人時生産性 = 100,000,000 ÷ 30,000 = 3,333円


一方、年商2億円で付加価値額が1億円の企業(B社)があったとします。従業員は10人で、年間労働時間は、2000時間(8時間×250日)とすると、年間の総労働時間は、20,000時間になります。
B社の人時生産性 = 100,000,000 ÷ 20,000 = 5,000円


A社もB社も。一人当たりの年間売上高は15百万円と同じですが、人時生産性は1.5倍も違います。A社、B社の平均給与や給与以外の固定費が同じだとしたら、従業員5人分の労務費が利益の差になって現れます。


人時生産性を高めるために、分子である付加価値額を高める事業(粗利がたくさん取れる商売)を目指す方法もありますが、競争の激しい時代においては難しいのが事実です。上記の例で言えば、付加価値率は33%のA社がB社のように付加価値率を50%にすれば、人時生産性は同じになりますが、非常に難しいことだと思います。
そこで、分母である労働時間を短縮することが必要になります。仕事の効率化を図るということです。上記の例で言えば、A社は10人の従業員で今と同じ売上を作れるような仕組みや体制にすることで、人時生産性はB社と同じになります。従業員15人全員が同じような能力を発揮すれば、売上や付加価値額が1.5倍になり、利益も当然増えることになります。


このように、人時生産性を高めることによって、社員に適正な給与を払い続けながら、将来の投資に備えた利益を生み出すことが可能になります。
では、どのようにして仕事の効率化を図ったらいいのでしょうか?


原則論から言いますと、「価値を生む時間を最大化し、価値を生まない時間を最少化する」ことです。仕事の中には、価値を生む時間とそうでない時間があります。価値を生まない時間を「ムダ」と言います。これを排除することが、「価値を生まない時間を最少化する」ことです。結果、価値を生む時間だけになり、「価値を生む時間を最大化する」ことになります。


しかし、そう簡単ではありません。現場の従業員に「ムダ」な時間を減らすようにと言っても、何も変化は起きません。現場で働いている従業員は、「ムダ」な時間を過ごしているとは誰も思っていませんし、毎日毎日一生懸命に仕事をしているからです。


では、どうするか。仕事を複数の作業の集まりだと考え、仕事を作業に分解してみます。そうすると、価値を生み出す作業と価値を生まない作業とに区別することができます。まずは、価値を生まない作業を減らす(無くす)ために、作業のやり方や働く環境を変更することから始める必要があります。(プロセス改善)
次に、作業毎にどれだけ時間がかかっているのかを測定します。価値を生み出す作業であっても、更に短縮する方法がないかを考えるためです。このときに、ITを活用して時間を短縮する方法があります。(作業の効率化)
また、人によってやり方が異なると、作業時間に「ムラ」が出ますので、作業のやり方を同じように統一(標準化)することも必要になります。(マニュアル化)
更に、標準的なやり方で作業ができない従業員には、できるように教育訓練を行うことも必要になります。


こうした改善の効果を評価するために、人時生産性で結果を確認します。そして、更なる改善策を検討します。

このように、改善活動を継続的に繰り返しながら人時生産性を高めていくことが、収益改善につながります。


ITの活用は、上記したように作業の直接的な効率化に役立つだけでなく、作業毎の時間測定や実績時間の分析、人時生産性の算出など、改善活動を推進するために伴う間接的な作業を効率化するという部分でも役立ちます。

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