先日、「孫正義の焦燥」(日経BP社 大西孝弘著)という本を読みました。ソフトバンク創業者の孫さんについて書かれた本です。天才的な発想で会社を大きくしてきた孫さんですが、その経営を支える優秀なスタッフがいることも書かれています。
経営管理の要は、マツダからソフトバンクに転職した藤原さんです。藤原さんの経営管理の哲学は、次の言葉で表されています。
「経営管理は差の分析だ。計画との差、競合との差、前年との差。これをいかにマネジメントするかに帰結する。」
過去ではなく未来を管理する
「藤原、俺は会社を運転するドライバーだ。バックミラーに映る景色は分かった。おまえはナビゲーションをするんじゃないのか。これからはフロントガラスに映る景色を見せてくれ」
藤原さんが孫さんに経営管理データを報告していたときの言葉だそうです。
財務諸表に表れる数字は過去のデータです。これまでの経営を振り返るには有効な数字ですが、今の経営がどうなっているのかまでは表していません。
未来を管理するとは、「過去」の結果を見るのではなく、「今」の行動を見ることです。そのためには、「今」の行動を把握するための数値が必要になります。「今」を変えるための改善活動に使用する数値を「KPI」と言います。商談回数、顧客訪問数、納期遵守率、などの数値です。
正しい判断をするための数字の使い方
数値管理の仕組み作りをご支援している中で感じることがあります。それは、「数字の使い方がわからない」ために、数値管理が上手くできない企業が多いということです。
数値管理の目的は、経営マネジメントを確実に行うことです。経営マネジメントには手順があります。手順のそれぞれにおいて数字を使うことで、質の高いマネジメントが実現できます。
マネジメントの手順は、「観察」「分析」「判断」です。
・「観察」とは、問題を発見すること
・「分析」とは、問題の原因を確定すること
・「判断」とは、問題を解決するための改善案、改革案を決めること
数字で「観察」するとは、自分たちが目指している状態の数字になっているかどうかを確認することです。計画値や目標値に比べてどうなっているのか、過去からの傾向がどうなっているのか、を数字で確認することです。
数字で「分析」するとは、数字を分解して問題の箇所を見つけ出すことです。部門別、商品別、地区別などに数字を分解することで、問題の場所を見つける方法があります。
また、数字を構成する要因別に分解する方法もあります。例えば、売上=顧客数×平均来店数×平均購買単価 と分解して、どの要因の数字が悪いのかを見つけ出します。
数字で「判断」するとは、改善案を実施し効果が表れた場合に、数字がどのように改善するのかをシミュレーションすることです。シミュレーションした結果、大きな改善が現れないようであれば、その改善案を考え直す必要があります。
継続して管理するための仕組み作り
数値管理を実現するためには、継続して数値を測定する仕組み作りが重要になります。また、測定するだけでなく、目標値との差や傾向を分析して行動を改善しなければなりません。このチェックと改善のサイクルを早く回すことで業績が向上します。業績を向上させている企業には必ず、こうした数値管理の仕組みが存在します。
しかし、こうした数値管理の仕組みを作るときに問題になることがあります。数値管理のために手間暇をかけていられないという声です。
数値管理を成功させるためには、社員の理解とIT活用が不可欠です。手間がかかっても数値管理の重要性を社員が理解することと、手間をできるだけ減らすためにITを活用することです。
「暑い」と言っても人によって捉え方は様々です。気温が30度以上と捉える人もいれば、気温が25度以上と捉える人もいます。数字を使わないと、曖昧なまま個々人が様々な判断を行います。結果、社内の行動がバラバラになります。一方、数字で明確に示すことで、社内で同じ認識を持つことができます。これによって、統一された行動が生まれます。
数値管理と言っても、難しい数学に取り組むものではありません。小学校で習った算数の知識があれば十分です。
社長がリーダーシップを発揮し、数値管理の仕組みを作り上げてください。
コメントをお書きください