前回は「システム企画の重要性」について書きました。今回は「システム企画の考え方」です。
「導入したITが期待したものと違う」「現場には役立っているかもしれないが、経営には貢献していない」という声をよく聞きます。これは、IT導入時に経営者の関与が薄いことが原因です。
ITを導入する目的は、現在抱えている問題や課題を解決することです。ところが、この問題や課題の捉え方が、経営者と現場の社員では異なります。それは、問題や課題を捉える視点や視野が異なるからです。
そのため、IT導入の際に、現場の社員に任せっきりだと現場社員の視点・視野でITを導入することになり、上記のような声になるのです。
ましてや、ITを導入するITベンダーに問題や課題が判るはずがありません。ITを使って問題や課題を解決することを考える(=システム企画)のは、企業自身です。
「あのITベンダーは何も判っていない」という声もよく聞きます。これは、自分たちの非を責任転嫁している言葉です。
では、どうしたら納得のいくIT導入ができるのでしょうか?
まずは、IT導入の目的を明確にすることです。これは、IT導入による期待効果やITによって解決すべき問題や課題を浮き彫りにすることになります。しかし、この目的の設定が、先ほども書いたように、経営者と現場社員とでは想いが異なります。ので、これをしっかりと話し合う必要があるのです。
経営者は、会社を将来どのようにしていこうか、と常に考えています。また、他社や他業界なども広く見ており、外からの視点で自分の会社を見ています。そのため、現在の問題や将来に向けての課題などを広く大きく捉えています。
一方、現場社員は、今現在の業務をどのようにしたらうまく行えるか、ミスを減らせるか、と常に考えています。内側の視点で自分の会社を見ています。そのため、どうしても小さな範囲で問題や課題を捉えていますが、内容は深いものがあります。
こうした立場の違いからくる視点や視野の違いをお互いに認識し、IT導入の目的をはっきりさせることが必要です。
目的や期待効果が明確になれば、対象となる業務範囲も明確になります。そして、問題や解決方法を具体的に考えることができます。現場で問題だと考えていたことが、経営レベルでの改善により、問題が問題でなくなることもあります。また、ビジネスモデルを大きく変えるような改革を伴う場合は、これまでの業務のやり方を抜本的に見直す必要があります。
ここでも、経営者の視点と現場社員の視点が必要になります。経営者の大きな視野だけで物事を考えると「絵に描いた餅」のような議論だけになります。そこで、現場社員の視野が必要なのです。しかし、現場社員だけで話をすると、細部にこだわった議論になり大きな視点を失ったり、目的を見失ったりします。
業務における解決策がまとまれば、その解決のためにITをどう活用するかという議論ができます。実際には、上記の業務レベルの改革・改善を議論する際に合わせて、ITの活用法を考えることになります。最近は、様々なITサービスが存在しますので、こうしたサービスを活用して業務を改革・改善することを検討します。
また、この段階までくると、ITベンダーさんを巻き込んでIT活用を検討する方法もあります。「餅は餅屋」ではありませんが、様々な経験を持っているITベンダーさんからよいアイデアを出してもらえる可能性があります。
このように、経営者と現場社員が議論を繰り返すことで、自社に必要な(役立つ)IT導入のグランドデザインが出来上がります。これを整理してまとめたものが「システム企画書」です。
「ITのことは任せているから」「ITはよく判らないから」という経営者がいらっしゃいます。これでは、会社が真に必要としているIT導入ができないことは理解いただけたと思います。
実際には、システム企画のためのプロジェクトを立ち上げ、必要に応じて経営者の考えをヒアリングしながら企画を進め、必要に応じて中間報告を行いながら経営者の承認を得る、という形で進めることになります。
問題や課題を解決するためには、問題や課題が明確でなければなりません。「問題を作る人」と「問題を解決する人」の両方が必要なのです。「問題を作る人」は経営者が中心にならなければなりません。「問題を解決する人」は現場を知っている社員の方です。
この組み合わせを上手に行えば、会社は発展していきます。システム企画だけでなく、こうした考え方を持って、経営をされてはいかがでしょうか。
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